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東京地方裁判所 昭和45年(行ウ)163号 判決

原告 三興製罐株式会社

被告 王子税務署長

訴訟代理人 国吉良雄 外三名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一当事者が求めた裁判

一  原告

被告が昭和四四年七月三一日付で原告の昭和四二年四月一日から昭和四三年三月三一日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の所得に対する法人税についてした更正及び過少申告加算税の賦課決定を取り消す旨の判決

二  被告

主文第一項と同旨の判決

第二当事者間に争いのない事実

一  処分の経緯

原告は、本件事業年度の所得に対する法人税について、昭和四三年五月三一日、所得金額を六、四四四、六三一円とする確定申告をしたところ、被告は、昭和四四年七月三一日付で、右申告所得金額に次のとおりの加算減算をした一八、〇八七、九五五円を所得金額とする更正をし、かつ、税額二〇〇、八〇〇円の過少申告加算税の賦課決定をした。

(1)  申告所得金額          六、四四四、六三一円

(2)  加算金額           一一、六四四、七〇四円

(イ) 土地圧縮積立金認容否認 一〇、七三六、七三三円

(ロ) その他            九〇七、九七一円

(3)  減算金額                一、三八〇円

(4)  差引所得金額         一八、〇八七、九五五円

二  特定の資産を譲渡した場合の課税の特例の適用について

1  原告は、昭和四二年五月八日、東京都北区田端町の所有地三筆合計四九五・八五平方メートルを代金三一、〇〇〇、〇〇〇円で他に売り渡し、また、同年一一月三〇日、同町の所有地四筆合計二、四五八・三四平方メートルを代金一四八、七三〇、〇〇〇円で他に売り渡した。

2  他方、原告は、昭和四一年一二月五日、草加市稲荷用水東及び同市柿木町山西の土地合計一五、〇二〇平方メートルを代金四九、〇五二、〇〇〇円で、また、昭和四二年七月一〇日、同市吉中及び松ノ木上田北の土地合計二、六四四平方メートルを代金一三、五一八、七七二円でそれぞれ他から買い受け、右各買受け後一年以内にこれらの土地の上に工事代金一二〇、一六七、一〇〇円で建物の建築を開始し、昭和四三年三月三一日、完成とともにその所有権を取得し、同日からこれを原告の事業の用に供した(以下、これらの土地、建物を「買換資産」という。)。

3  そこで、原告は、右買換資産について、特定の資産を譲渡した場合の課税の特例を定めた租税特別措置法(昭和四三年法律第二三号による改正前のもの。以下「法」という。)第六五条の四の規定の適用を受けるため、土地については、確定した決算において利益剰余金の処分により六二、五七〇、七七二円を土地圧縮積立金として積み立てる方法により経理し、建物については、損金経理により八六、三一七、三五二円を建物圧縮引当金として引当金勘定に繰り入れる方法により経理したうえ、本件事業年度分の法人税確定申告書に右土地圧縮積立金及び建物圧縮引当金に相当する金額の損金算入に関する申告の記載をし、かつ、次のような損金の額に算入される金額の計算に関する明細書を添付した。

買換資産の種類

土地

建物

合計

買換資産の取得価額

六二、五七〇、七七二円

一二〇、一六七、一〇〇円

一八二、七三七、八七二円

引当金又は積立金として経理した金額

六二、五七〇、七七二

八六、三一七、三五二

一四八、八八八、一二四

買換資産の取得のため対価の額の合計額から支出した金額

七五、五三二、〇七六

一〇四、一九七、九二四

一七九、七三〇、〇〇〇

圧縮限度額

六二、五七〇、七七二

八六、三一七、三五二

一四八、八八八、一二四

圧縮限度超過額

4  ところで、原告が前記1の資産の譲渡により取得した対価の額の合計額は一七九、七三〇、〇〇〇円であり、右資産の譲渡直前の帳簿価額の合計額(右譲渡に要した経費の額を含む。)は三〇、八四〇、四八七円であるから、本件において、法第六五条の四第一項に定める差益割合は、右対価の額の合計額から右帳簿価額を控除した残額一四八、八八九、五一三円の右対価の額の合計額一七九、七三〇、〇〇〇円に対する割合である〇・八二八四………である。

そこで、まず、買換資産のうち、土地について圧縮限度額を計算すると、土地の取得価額は前記2のとおり四九、〇五二、〇〇〇円及び一三、五一八、七七二円(合計六二、五七〇、七七二円)であるから、圧縮限度額は、右取得価額に前記差益割合を乗じて計算した金額である四〇、六三四、九九九円及び一一、一九九、〇四〇円(合計五一、八三四、〇三九円)であり、次に建物について圧縮限度額を計算すると、前記2のとおり建物の取得価額は一二〇、一六七、一〇〇円であるから、圧縮限度額は、右取得価額のうち、前記1の資産の譲渡により取得した対価の額の合計額から前記土地の取得価額の合計額を控除した金額である一一七、一五九、二二八円をこえる金額を控除した金額(すなわち一一七、一五九、二二八円)に前記差益割合を乗じて計算した金額である九七、〇五五、四七四円である。

5  そうすると、原告が建物圧縮引当金として引当金勘定に繰り入れた八六、三一七、三五二円は圧縮限度額の範囲内であるが、土地圧縮積立金として積み立てた六二、五七〇、七七二円は圧縮限度額を超過することになる。

そこで、被告は、原告が確定申告において所得金額の計算上損金の額に算入した土地圧縮積立金に相当する金額のうち圧縮限度額を超過する一〇、七三六、七三三円の損金算入を否認し、右金額を原告の申告所得金額に加算した。

第三争点

一  原告の主張

被告が土地圧縮積立金に相当する金額のうち一〇、七三六、七三三円の損金算入を否認し、これを原告の申告所得金額に加算したのは、次のとおり違法である。

1  原告が確定決算において圧縮限度額をこえる土地圧縮積立金を積み立て、他方圧縮限度未満の建物圧縮引当金を引当金勘定に繰り入れたのは、法第六五条の四第一項の規定の解釈を誤つたことによるものである。

すなわち、複数の買換資産がある場合には、右規定による圧縮限度額の計算は、買換資産ごとに行なわなければならないにもかかわらず、原告は、買換資産の全体について圧縮限度額の計算を行なうものと誤解し、まず、第二の二2記載の買換資産の取得価額の合計額一八二、七三七、八七二円のうち第二の二1記載の資産の譲渡により取得した対価の額の合計額一七九、七三〇、〇〇〇円をこえる部分を控除した金額(すなわち一七九、七三〇、〇〇〇円)に差益割合を乗じて計算した金額である一四八、八八八、一二四円を圧縮限度総額とし、そのうちの六二、五七〇、七七二円(土地の取得価額と同額)を土地についての圧縮限度額とし、残額の八六、三一七、三五二円を建物についての圧縮限度額としたのである。

しかしながら、原告が真に意図したところは、買換資産である土地及び建物のいずれについても法第六五条の四第一項の規定が許容する最大限の損金算入を行なうことにあつたのであり、このことは、通常の経済人の合理的な選択意思と合致するばかりでなく、原告が被告に提出した確定申告書添附の明細書にも客観的に表現されている。

すなわち、法第六五条の四の規定による課税の特例の適用を受けるかどうか及び右規定が許容する範囲内でどの程度その適用を受けるかは、すべて法人の任意の選択に委ねられているが、法人は、右課税の特例の適用を受けることにより、損金の額に算入した金額に対応する法人税の支払いを一時猶予されるのと同一の結果を得ることができるのであるから 通常の経済人であれば、最大限に右課税の特例の適用を受けることを選択するのが当然である。また、原告は、買換資産のうち、土地については圧縮限度額をこえる損金算入をし、他方、建物については圧縮限度額に満たない損金算入をしたが、買換資産である土地及び建物の全体を通じてみれば、法第六五条の四の規定が許容する最大限まで損金算入をしたものであることは、第二の二3記載の明細書の記載自体から明らかである。

そして、原告が右のとおり一方で圧縮限度額超過の損金算入をし、他方で圧縮限度額未満の損金算入をしたのは、課税所得算出過程における計算上の誤りにすぎず、原告の真意に従つて土地及び建物のいずれについても法第六五条の四の規定が許容する最大限の損金算入をした場合と比べて、算出される課税所得金額に何らの差異をも生じないのであるから、原告がした申告は、土地及び建物のいずれについても法第六五条の四第一項の規定が許容する最大限の損金算入をするという趣旨であると認めるべきであり、したがつて、原告が申告所得金額の計算上過大に損金を計上したことにならない。

2  仮に、原告がした申告の趣旨が右のとおりであると認められないとすれば、原告がした申告には意思と表示に不一致があることになるが、以下に述べる諸事情の下で、意思と合致しない表示に従つて申告の効果を認めることは、課税の公平という観点から、原告にとつて著しく酷であるから、原告の真意に従つた申告の効果が認められるべきである。

(一) 法第六五条の四の規定は甚だ難解であり、容易にその趣旨を理解することができない。

(二) 被告が用意した確定申告書に添付すべき損金算入に関する明細書の様式をみると、買換資産の種類ごとに所要事項を記入するようになつていて、圧縮限度額を個々の買換資産ごとに記入することができないばかりでなく、何らの意味がない圧縮限度額の合計額を記入する欄が設けられている。このような明細書の様式は、法第六五条の四の規定の解釈について原告が前記のとおり犯した誤りを誘発し易い。

(三) 原告には脱税の意図は全くなく、原告は課税の特例の適用を最大限に受けようとしたにすぎない。

(四) 原告の真意に従つた申告の効果を認めても、税額が減少することはない。

(五) 原告が明細書の記載と異なる真意を主張することは何ら信義則に反することではない。

3  仮に、以上の主張に理由がないとしても、右2(一)から(五)までの事情のほか、次のような特別の事情がある本件において、かたくなに形式的な法の解釈の下に、原告がした損金算入を否認し、これを原告の申告所得金額に加算してした被告の更正及びび過少申告加算税の賦課決定は、課税の公平の原則に反し、課税権を濫用した違法がある。

(一) 原告は、公害の防止、都市の美化、都市機能の確保等を図ることを目的とする都及び区の都市政策に協力し、民家、人口の密集する北区田端町の市街化地域から埼玉県草加市の工場団地に工場を移転するために、第二の二1及び2記載のとおり資産の買換えをしたのである。

(二) 法第六五条の四の規定は、このような場合に生ずる莫大な譲渡所得に対してそのまま課税することの不合理を避け、企業を保護、育成する目的で設けられたのであるから、そのような目的にそうように解釈されるべきである。

(三) 修正申告又は更正の請求は、課税標準等又は税額等に増減を生ずる場合でなければ許されないから、これらに何らの増減を生じない本件においては、原告がした申告の誤りを法的に是正する手段がない。

(四) 原告は、本件処分前に、被告に対し、たびたび原告の真意を伝え、嘆願書を提出して、善処方を求めた。また、原告がその後翌事業年度の決算において真意に従つて経理を訂正したことは、原告が本件処分前に被告に提出した翌事業年度の確定申告書の記載によつて明らかである。

(五) 本件のような課税の特例の適用は、納税者の選択意思に従つて行なわれるべきであり、原告が申告前に法の誤解により一方で限度額超過を生じ、他方で同額の限度額不足を生ずることに気づいたとすれば、当然一方は限度額まで引き下げ、他方は限度額まで引上げていたはずであり、被告は、原告がそのような意思を有していたことを原告が提出した確定申告書添付の明細書によつても、また、申告後の原告の申出によつても十分に知りながら、限度額不足の方はそのままにし、限度額超過の方だけを取り上げて本件処分をしたものである。

(六) 原告は、本件処分の結果、一時に多額の納税をしなければならず、真意のとおり課税の特例の適用を受けることができた場合と比べて多大の損失を受け、その負担は、小規模な会社である原告にとつては、社命にかかわるほど重大である。

二  被告の主張

1  法第六五条の四の規定は、複数の買換資産がある場合には、それぞれの買換資産ごとに、その圧縮限度額の範囲内に限つて、損金に算入することを認めたものである。

したがつて、それぞれの買換資産の圧縮限度額の計算に誤りがあつても、その合計額が圧縮限度額の範囲内であればよいというものではない。

2  また、右規定による課税の特例の適用を受けるかどうかは、法人の任意の選択に委ねられているが、法人がその適用を受けるためには、その決算を確定する際に右規定の定める経理上の処理を行ない、その確定した決算に基づいて申告をしなければならない。

ところで、原告は、土地については、確定した決算において利益剰余金の処分により六二、五七〇、七七二円を土地圧縮積立金として積み立て、建物については、損金経理により建物圧縮引当金として引当金勘定に繰り入れ、このように自ら選択した経理に基づいて決算を確定したうえ、それに基づいて申告をしたのである。

ところが、右のとおり原告が土地圧縮積立金として積み立て、損金に算入した金額が圧縮限度額を超過していたので、被告は、右超過額の損金算入を否認したものであつて、本件処分に何ら違法はない。

3  法第六五条の四の規定は、法人が特定の資産を譲渡した場合における課税について特に優遇するものであり、その文意も明らかであるから、文言どおり厳格に解釈されるべきであり、これを拡大解釈することは許されない。したがつて、被告が圧縮限度超過額の損金算入を否認したのは当然であり、それが課税の公平の原則に反し、課税権の濫用に当たるという原告の主張は全く理由がない。

第四証拠関係〈省略〉

第五争点に対する判断

一  法第六五条の四第一項は、買換資産の圧縮限度額につき、「当該買換資産につき、その取得価額(その額が当該譲渡に係る対価の額(………当該事業年度において当該譲渡に係る対価の額の一部に相当する金額をもつて取得をした他の買換資産でこの項の規定の適用を受けるものがある場合には、当該他の買換資産の取得価額を控除した金額とする。………)をこえる場合には、そのこえる金額を控除した金額)に」差益割合を乗じて計算した金額とする旨定めている。

すなわち、圧縮限度額は、原則として、当該買換資産の取得価額を基礎として計算されるが、その取得価額が同項に掲げる資産の譲渡に係る対価の額をこえる場合には、その取得価額のうち右対価の額をこえる金額を控除した金額(すなわち、右対価の額に相当する金額)を基礎として計算され、さらに、当該事業年度において右対価の額の一部に相当する金額をもつて取得した他の買換資産で同項の規定の適用を受けるものがある場合には、右対価の額から当該他の買換資産の取得価額を控除し、当該買換資産の取得価額のうち右控除した残額をこえる金額を控除した金額(すなわち、右控除した残額に相当する金額)を基礎として計算されることになる。

したがつて、複数の買換資産があり、その取得価額の合計額が資産の譲渡に係る対価の額をこえる場合において、同項の規定の適用を受けるときは、法人は、その任意の選択により買換資産につき右規定の適用を受ける順序を定めたうえで、その順序に従い買換資産ごとに圧縮限度額を計算しなければならない。

また、同項は、法人が買換資産につき圧縮限度額「の範囲内でその帳簿価額を損金経理により減額し、又はその帳簿価額を減額することに代えてその圧縮限度額以下の金額を損金経理により引当金勘定に繰り入れる方法(当該買換資産のうちその償却額が各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されるもの以外のものについては、その確定した決算において利益又は剰余金の処分により積立金として積み立てる方法を含む。)により経理した場合に限り、その減額し、又は経理した金額に相当する金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する」旨定めている。そして、右にいう「損金経理」とは、法人がその確定した決算において費用又は損失として経理することである(租税特別措置法第二条第二項第一〇号、法人税法第二条第二六号)。

すなわち、同項は、法人がその決算を確定する際に右のとおり同項が定める方法による経理上の処理をすることを要件とし、右の処理をした金額に限り、しかも圧縮限度額の範囲内で、所得の金額の計算上損金の額に算入することを認めているのである。

したがつて、法人が確定決算において所定の経理上の処理をした金額が圧縮限度額をこえるときは、所得の金額の計算上損金の額に算入される金額は、圧縮限度額に相当する金額までに制限される。これに対して、法人が確定決算において右の処理をした金額が圧縮限度額に満たないときは、所得の金額の計算上損金の額に算入されるのは、右の処理をした金額に相当する金額に限られるのであり、右金額が圧縮限度額に満たないからといつて、法人が確定申告をする際に、右金額をこえる金額を所得の金額の計算上損金の額に算入することは許されないといわなければならない。

二  ところで、前示当事者間に争いのない事実によれば、原告は、その確定決算において、買換資産のうち、土地については、利益剰余金の処分により六二、五七〇、七七二円を土地圧縮積立金として積み立て、建物については、損金経理により八六、三一七、三五二円を建物圧縮引当金として引当金勘定に繰り入れる方法によつて経理したが、土地についての圧縮限度額は五一、八三四、〇三九円であり、建物についての圧縮限度額は九七、〇五五、四七四円であるというのである。

そうすると、原告が土地について右のとおり経理した金額のうち圧縮限度額をこえる部分は、所得の金額の計算上損金の額に算入することが許されないから、被告が原告のした右超過部分の損金算入を否認し、これを原告の申告所得金額に加算したのは正当であるといわなければならない。そして、他方、原告が建物について右のとおり経理した金額は、圧縮限度額の範囲内であるから、右金額に相当する金額は、所得の金額の計算上損金の額に算入されるが、原告が所定の経理をしたのは右金額にとどまるから、損金の額に算入されるのは右金額に相当する金額に限られるというべきである。

三  原告は、原告の真意が買換資産である土地及び建物のいずれについても法第六五条の四第一項の規定が許容する最大限の損金算入を行なうことにあつたことを前提とし、原告がした申告も同様の趣旨であると認めるべきであり、そうでないとしても、課税の公平という観点から原告の右真意に従つた申告の効果が認められるべきである旨主張する(原告の主張1及び2)。

しかしながら、かりに原告の真意が右主張のとおりであつたとしても、原告がその確定決算においてした経理上の処理は前示のとおりであつて、右真意にそつた処理がされていないのであるから、右真意にそつた損金算入を認めるに由ないというほかはない。したがつて、原告の主張1及び2は、その主張自体失当である。

また、原告は、その主張のような特別の事情の存する本件においてされた被告の処分は、課税の公平の原則に反し、課税権を濫用した違法がある旨主張する(原告の主張3)。

しかしながら、法第六五条の四第一項の規定は、一定の要件の下に法人の資産の譲渡益に対する課税の繰延べを認める特別の措置を定めたものであること、右規定の適用を受けるかどうか及び右規定が許容する範囲内のどの限度でその適用を受けるかは、法人の任意の選択に委ねられていること(したがつて、この選択は、当該法人の収益及び資産の状態、将来の見通し等の諸事情を勘案して行なわれるのを通例とし、必ずしも許容される最大限の損金算入を行なうのが経済人として当然ということはできない。)、前示のとおり、原告がした損金算入の一部が認められないのは、原告が土地について前記のとおり経理した金額が圧縮限度額を超過するからであり、他方、建物について圧縮限度額までの損金算入が認められないのは、原告が確定決算において圧縮限度額まで所定の経理をしなかつたからであること等を考慮すると、たとえ、原告が主張するような事情があるとしても、被告がした処分が課税の公平に反し、課税権を濫用したものであるとはとうてい認められない。

第六結論

そうすると、原告の請求は理由がないから、これを棄却し、訴訟費用は敗訴の原告の負担として、主文のとおり判決する。

(裁判官 杉山克彦 吉川正昭 青山正明)

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